泣けちゃう本

色々な意味で泣けちゃう。
川上未映子 『あこがれ』

『ミス・アイスサンドイッチ』と『苺ジャムから苺をひけば』の二つの章からなります。

男の子の主人公「麦くん」のあこがれの対象はミス・アイスサンドイッチ。
小学生だって、恋をする。
ミス・アイスサンドイッチと会えなくなることや、そもそもの寂しさ_お父さんのこと、お母さんのこと、おばあちゃんのこと・・・

一方、とっても魅力的な女の子「ヘガティー」も、お母さんの死や、お父さんについて初めて知ったことや・・・

二人とも、いろいろな感情がごちゃませになって、泣いて泣いて、泣く。

何度読んでも、こっちも泣けてきます。なんとも切なくて、いとおしくて、二人をギュッと抱きしめたくなる。
そんな物語です。

この本は亡くなった義理の母の抗がん剤治療に付き添いながら読んだのが最初でした。
すっかり食が細くなって、なんでも一口食べるのがせいぜいだった母が、その日はコールスローのサンドイッチを「これは、味がいいこと」と言ってたくさん食べてくれました。抗がん剤点滴は5時間かかるから、ベッドの母の傍で読んだ本でした。

85歳で悪性リンパ腫を患い、かなり危ない状況を乗り越えて、退院まで頑張った母。
『ひょっとしたら、通院の抗がん剤で寛解までたどり着けるんじゃないか?』と思えるようなときもありました。
けれども、母の病状はだんだんとよくない方向に・・・

サンドイッチをおいしそうに食べてくれた母。そのあとも、ページをめくるたびに、春のひだまりのような温かな記憶として思い出されます。

とても素敵な物語だから、興味のある方はぜひお手にとってください。