本のこと_いちばんボロい本
読書や本をテーマにしたおしゃべり。
第2回目は『いちばんボロい本』
もっと古い本は何冊かありますが、いちばんボロいのはこれでした。
村上春樹:『羊をめぐる冒険』
夏の終わりから、秋~冬にかけて毎年読むので、こんな姿になっちゃいました。
発行されたのは1982年10月15日、今から38年前です。
17歳の秋。私はかなりの時間を『羊をめぐる冒険』と過ごしました。
古びた『いるかホテル』のロビーで支配人の言葉に耳を傾けながら、『一度でいいから支配人が羊博士に愛されていると思える瞬間があればいいのに・・・』と思ったり、雑木林のベンチでポツリポツリ話す羊男に『もしかして、鼠?』って聞いたり・・・
私の心をざわざわさせたのは”僕”でもなく、”鼠”でもなく『羊博士』でした。
こんな人生・・・。こんな物語。
まだ『本当の人生』は始まっていなくて、夢見るように過ごしていた17歳の私の心はギュっとしめつけられました。
1982年
『蒲田行進曲』風間杜夫の銀ちゃんが見たくて映画館に行ったのに、清川虹子の演技がすごくてどきりとし、『鬼龍院花子の生涯』夏目雅子の「なめたら、あかんぜよ!」にしびれ、『ブレードランナー 』にはまっていた。
そんな時代のお話。
熱狂的なファンが多い一方で、『さっぱりわかんない』『なんで評価高いの?』って人も多い村上春樹。
ホットインでは、ほぼ全員( HiRooooMi 以外)否定派。
ブログに書いているスタッフもいますし、お世話になっている会社の方も何かで村上春樹の話になり
『あ~私はダメですね~。苦手です・・・・』
村上春樹はエッセイ『雑文集』の中で書いています。
❝ときどき年若い読者から長い手紙をもらう。彼らの多くは真剣に僕に向かって質問する。
「どうしてあなたに、私の考えていることがそんなにありありと正確に理解できるのですか?
こんなに年齢も離れているし、これまで生きてきた体験もぜんぜん違うはずなのに」と。
僕は答える。「それは、僕があなたの考えていることを正確に理解しているからではありません。
僕はあなたのことを知りませんし、ですから当然ながら、あなたが何を考えているかだってわかりません。
もし自分の気持ちを理解してもらえたと感じたとしたら、それはあなたが僕の物語を、 自分の中に有効に取り入れることができたからです」と。
仮説の行方を決めるのは読者であり、作者ではない。 物語とは風なのだ。揺らされるものがあって、初めて風は目に見えるものになる。❞
Kimには揺らされるものがなかったのでしょう。ただそれだけ。